彼女たちのミッションとは?
Rutaksha Rawat著
Visit ORGANIC SHOP by Pure & Eco India
HASORAの共同創業者である八田舞・飛鳥(35)は、
今から約10年前(それぞれ2010年、2012年)にインドに来ました。
妹の飛鳥は、2013年に日系人材紹介のデリー拠点立ち上げメンバーとして参画。日系企業を中心にインド人・日本人双方の採用支援に従事。会社の成長を支えてきました。
姉の舞は、2010年に渡印。ジャイプールラグズカンパニーへ入社し、ジャイプール本社にて、 日本のバイヤー向けの営業を担当。
その後、ウッタラカンド州の山村開発NGOにて、エコルーラルツーリズムの企画に携わり、 日本の大学生へ農村滞在型のスタディーツアーを実施。
そんな2人が2016年に有機食品ブランドのHASORAを創業しました。
なぜインドで起業したのか?どのようにして、これまで困難を乗り越えてきたのか?
これからのビジョンは?
今回のインタビューで、Pure&EcoIndiaがその答えに迫ります。
ーHASORAの事業内容について教えてください。
HASORAは、有機野菜などの安全に配慮した食品、有機食材を使用した加工食品を製造・販売している有機食品ブランドです。収穫後24時間以内に新鮮な有機野菜や果物をお客様にお届けしています。サプライチェーンに透明性をもたらすことで、農家と最終消費者の間のギャップを埋めています。消費者に健康的な食品を提供し、付加価値の高い農産物を販売できる市場を作ることによってパートナー農家に利益をもたらすことを目的としています。
ーご出身は?
舞:私たちは日本の千葉県出身です。2010年に私が、2012年に妹の飛鳥が渡印しました。その後、2013年にグルガオンに引っ越すことを決めて、それから、約7年ほどグルガオンに住んでいます。
ーどのような経緯でインドにてオーガニックビジネスを始めましたか?事前に市場調査などを行ったのでしょうか。
舞:飛鳥は大学時代から、社会課題を解決する仕組みを作り、ビジネスをしたいと考えていました。私は、大学生の頃から、世の中の不公平を無くし、誰もがそれぞれの環境に関わらず、可能性を最大化することができる社会を作りたいと考えていました。
そんな中、私たちの最愛の祖母が突然亡くなりました。その祖母の死に直面して、
「人生には、必ず終わりがあり、人生は有限である。」ということを強く痛感しました。
であれば、自分たちが本当に成し遂げたいこと、情熱を傾けやりたいことをすぐに実現するべきだと感じました。祖母が、人生の最後に、「人生で忘れてはならない大切なこと」を教えてくれました。
私は2010年からインドに住んでおり、特にグルガオンに住み始めてからは、食品の安全性についての問題を感じていました。高級スーパーマーケットを含む多くのインドのスーパーマーケットで販売されている野菜は新鮮ではない傾向があります。また、「誰が自分が口にする食べ物を育てているのか」、「どのように育てられたのか」等の情報を知りたくても、そのような情報を得ることが容易ではありませんでした。
この10年ほどで、日本ではサプライチェーンの透明性や食の安全性に重点が置かれるようになりました。また、産地直送モデルの必要性を感じる人も増えており、生産者と消費者を直接つなぐための仕組みが構築され、消費者の選択肢も増えてきました。
インドでは、産地直送の考え方は、新型コロナウイルスの影響で以前と比べて、
注目を集めていますが、通常平均中間業者が5-7程経由しているインドでは、まだまだ新しい考え方だと言えます。
飛鳥と私は、インドの人々の食の安全に対する意識を変えたいと考えていました。
そして公平な対価を得ることが難しい生産者と、より安全性を求める消費者の双方に利益のある仕組みを作るべきだと考えました。
インドでは良い生産者さんがいても、なかなか自分たちの農作物を売ることが難しく、
市場の決めた値段以上で、販売することが難しい仕組みがあります。自分たちで価格を決定することが非常に難しいため、特に規模の小さな生産者さんは、十分な収入が得られないという現状があります。
私たちは、まだまだ課題が多いこのインドという場所で、
新鮮で安全な美味しい食を必要な人に提供したいと強く思うようになりました。
これが、私たちが事業を始める場所としてインドを選んだ理由です。
そして、2016年5月にHASORAが誕生しました。
ーなぜあなたは事業を始める場所としてグルガオンを選んだのですか?
新鮮な有機食品を最も必要としているのは都市部の消費者です。なぜならグルガオンは都市部で、より鮮度の良い食材を手に入れることが難しいエリアだからです。
そのため、北インドの農家と提携して、デリー首都圏にて宅配事業を開始しました。
ー言語の壁をどのように乗り越えていますか?
私たちがヒンディー語で意思疎通ができるように努力しヒンディー語で話しをしています!
ーインドのビジネスパートナーなしでインドの会社を登録することは可能なのですか?
私たちは以前グルガオンにある日系企業で約3年ほど働いていました。インドで3年働いていた経験があったため、インド人ビジネスパートナーがいなくても会社を設立することが出来ました。
ー契約農場はどこにありますか? NPOP / PGS認証を取得していますか?
HASORAには約15箇所ほどのの契約農場があります。私たちの契約農場は、デリー、ハリヤナ州、ウッタラカンド州、ヒマーチャルプラデーシュ州、ウッタルプラデーシュ州にあります。いくつかの農場はNPOPまたはPGS認定を受けています。
(NPOPやPGSは、インドの有機認証のことです。)
その他の農場は、無農薬栽培として、農薬を使わずに農業をしています。現在、私たちは自分たちの農場を所有していませんが、グルガオンから2時間以内の場所に、新しく有機農園を開始する計画があります。そこで、日本野菜や日本のイチゴを含めた、農作物を栽培する計画を立てています。
オーガニックの野菜や果物の他に、添加物を使用しない加工食品や、お肉やシーフード類を取り扱っています。 また、産地直送の野
菜を使った新鮮なカット野菜やサラダ、ヘルシーなお弁当や冷凍スープなども販売しています!
ー認定されていない農場では、どのようにして化学物質を含まない農産物を確保しているのでしょうか?また、どのように審査していますか?
私たちは何度も農場を訪れ、農法を確認しています。私たちは長年にわたって農家と信頼できる関係を築いてきました。HASORAのミッションを共に達成する意欲のある、情熱的でな生産者とのみパートナシップを組んでいます。
ーニュースレターおよびSNSの投稿の多くが日本語ですが、ターゲットは日本人なのでしょうか。
これまで、お客様の大半は日本人でした。しかし、新型コロナウイルスの影響でお客様の80~90%が日本に帰国しました。今、私たちは地元のインド人に必要とされるサービスや商品作りに取り組んでいます。新型コロナウイルスの影響で、インドの消費者の間で、食の安全性に関する意識は高まっています。現在の状況を好機と捉え、より多くのインド人の顧客にアプローチしようとしています。
ーニムラナへも配達していますか?
はい、毎週ニムラナへ配達しています。日系企業の工業団地で、日本人が200名近く住んでいるエリアです。周辺にはお店が少なく、スーパーマーケットがないため、毎週利用いただいている方が多く、好評をいただいています。
ーB2B(企業間取引)にも携わっていますか?
はい、デリー首都圏のレストランにも私たちの商品を卸しています。
ーオンラインストアだけでなく、店舗もありますか?
オンラインストアと店舗が1軒あります。
店舗は、グルガオンのVyper kendraマーケットにあるIrohaさん(日系のパン屋さん)
の店舗内にあります。
【HASORA ORGANIC STORE】
住所:GF 144-146, Sushant Vyapar kendra, Vyapar Kendra Rd, Block C, Sushant Lok Phase I, Sector 43, Gurugram, Haryana 122003
地図:https://goo.gl/maps/HUb6SKTBu1Kctghn8
また、オンラインストア
hasora-in.myshopify.com
デリーとグルガオン・ニムラナへの配達を行なっています。
ーオーガニックの新鮮な果物や野菜の他には、どのような商品を扱っていますか?
果物や野菜から化粧品まで、幅広い商品を取り揃えています。和風サラダやスープ、カット野菜、ミールキット、お弁当なども販売しています。
より便利にご利用いただけるように、チーズ、お肉、シーフード、加工食品などの販売も開始しました。
オーガニックやヘルシーな商品のワンストップサービスを目指し、
将来的には、食だけでなく、生活に必要なものが全て揃うようなライフスタイルブランドを目指しています。
ー注文方法は個別注文ですか?それとも定期購入ですか?
両方です。常連のお客様は、さまざまなサイズと価格からお選びいただける季節の野菜セットを定期購入されています。
ーHasoraは月に何件の注文を受けますか?
現在、オンラインストアを通じて月平均200件の注文を受けています。SushantLokの店舗では月間600人強のお客様が来店しています。(*ロックダウン前)
ー自己資金で運営されていますか?
はい。自己資金で運営し、3年ほどで黒字化しました。
ーあなたの競争相手は誰ですか?
デリー首都圏の他のすべての有機食品ブランド、特に生鮮食品アグリゲーターが競合会社です。この2年ほどで、インド人の健康意識が高まり、有機食品を扱う企業が急激に増えています。しかし、私たち独自の取り組みは、収穫から24時間以内に新鮮な野菜や果物を配達することです。日本レベルの品質管理と鮮度に特にこだわっています。そういった取り組みは競合他社との差別化ができていると信じています。
ー「HASORA」とはどういう意味ですか?ロゴの中の2人の女の子は誰ですか?
飛鳥:「ハソラ」という名前は、「笑う」という意味のヒンディー語の「ハスナ」に由来しています。
ハソラは日本語で「葉」と「空」を意味します。
常に上を向いて成長し、青空のように多くの人に、元気と幸せをを与えることができる会社になりたいと考えました。明るく、前向きなエネルギーをHASORAという名前に込めています。
また、HASORAのロゴはデザイナーである友人が、私たち2人を描いてくれました。
ロゴに2人の人間がいることは、私たちが目指す食の形を現しています。愛する人・大切な人と一緒に心と体が元気になる食を笑顔で共有する経験が、もっともっと私たちの人生を豊かにすると信じています。
ーHASORAの将来のビジョンは?
私たちは、サプライチェーンの透明性を維持し、農家と消費者の両方に利益をもたらしたいと考えています。また、日本の品質チェックシステムと品質基準を確立し、インドで最大かつ最も信頼できるオーガニックブランドを目指しています
ミニ質問コーナー
ーあなたにとって有機食品とは?
地球とのつながりを感じられ、心と体が喜ぶ人生を豊かにしてくれるもの。
ーインドの好きなところ3つを挙げてください
私たちはインド人のホスピタリティー(ゲストは神様という考え方!)、驚くような多様性、そして変化にスピーディーに対応する柔軟性が好きです。
ーインドの嫌いなところ3つを挙げてください。
運転マナー(鳴り止まないクラクション!)、整理されていない情報や物事が多すぎる事、カスタマーサービスが良くないところです。
ーこれまでHASORAにて最も苦労したことは?
創業2年目にキャッシュフローが苦しくなり、引っ越し費用(敷金、礼金などを含めて)を一括で支払うことが難しくなり、住む家がなくなってしまったことです。
ーインドでオーガニックビジネスを始めたいと思っている外国人へのアドバイスはありますか?
自分の心の声を聞いて、情熱があること、天命だと思えることに
挑戦してください。インドのオーガニック食品の市場規模は、2018年の7億ドルから2024年に は21億ドルと、年率20%で成長しており、注目を浴びている業界の一つです。
とはいえ、まだまだオーガニック食品は広く浸透しておらず、啓蒙活動も含めて、これから伸びていく業界ともいえます。
インドではまだ新しい業界のため、課題も多いですが、その分まだまだチャンスが大いにあります。ビジネスのタイミングを見極めることは最も大切なことですが、インドでのオーガニックや健康に関するビジネスは、これからが良いタイミングです。
一つアドバイスをするならば、インドでのビジネスにおいて、
絶対に「100%の金額を前払いしてはいけない」ということを必ず覚えておいてください!
一度きりの人生。自分の天命だと思えることに、邁進し、最高の人生を歩むために、
ぜひ一歩を踏み出してください!
八田飛鳥
カリフォルニア州立大学国際関係学部卒業。
日本帰国後、起業家支援会社で社会起業家支援プログラム等の担当を行うなど、特にアーリー・ベンチャーを中心とした起業支援に携わる。
2013年4月よりリクルートホールディングスの海外法人であるRGFインドに入社。日系企業を中心にインド人・日本人双方の採用支援に従事。
インド生活の中で、食の安全性に課題を感じ、インドにて産地直送の仕組みを作るべく、双子の姉と2016年にHASORA (ハソラ)Organic India を設立。生産者と消費者を直接つなぐプラットフォームを構築し、より高品質で安全・安心な食を多くの人に届けるため奮闘中。インド生活は8年目。
八田舞
サンフランシスコ州立大学国際関係学部卒業。
2010年にインドに渡り、ジャイプールラグズカンパニーへ入社し、ジャイプール本社にて、 日本のバイヤー向けの営業を担当。その後、ウッタラカンド州の山村開発NGOにて、エコルーラルツーリズムの企画に携わり、 日本の大学生へ農村滞在型のスタディーツアーを実施。2013年からグルガオンのJTB Indiaにて国内外の旅行手配を担当。2016年よりHASORA Organic India の共同創業者として、安全で健康な食を通して生産者・消費者双方の可能性を最大化したいという理念の実現を目指す。また、産地直送の仕組みを通し、インド農村部の雇用機会の創出を志す。インド生活は10年目。
ファクトファイル
会社:Hasora Organic India Private Limited
設立年度:2016年
創設者:八田舞、八田飛鳥
場所:グルガオン
事業内容:アグリゲーター、小売業者、卸、加工品の生産
取り扱い商品:有機果物、有機野菜、その他の有機食品
季節の詰め合わせセット(初回価格):Rs 600(Sサイズ) / Rs 890(Mサイズ) / Rs 1,390(Lサイズ)
店舗:住所:GF 144-146, Sushant Vyapar kendra, Vyapar Kendra Rd, Block C, Sushant Lok Phase I, Sector 43, Gurugram, Haryana 122003
地図:https://goo.gl/maps/HUb6SKTBu1Kctghn8
オンラインストア:hasora-in.myshopify.com
ウェブサイト:www.hasora.in
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